レコードプレーヤーの要ともいえるパーツ、それは「レコード針」です。
レコードの再生に欠かせないパーツであることはもちろんですが、レコード針の選択によって大きく音質が変わること、消耗品であるため再生を繰り返すうちに劣化していくことも、知っておかなければいけません。
今回は、レコード針とはなにか、交換が必要になる寿命の目安やカートリッジ・針先の種類と特徴を解説します。
レコード針を選ぶポイントも紹介していますので、レコード針を交換する際の参考にぜひお役立てください。
レコード針ってなに?
まずはじめに、「レコード針」とはなにか、どのようなパーツで寿命はどれくらいなのか、詳しく解説していきます。
レコードを再生するための重要なパーツ
レコード針は、レコードを再生する上で欠かせない、まさに要となる大切なパーツです。
レコードは、レコード針がレコード盤面の溝を電気信号に変換することで、音として再生されます。そのため、レコード針は、レコードを再生する上で最も重要なパーツ、と言っても過言ではありません。
レコード針の種類によって、音の迫力やノイズの有無などに差が出ます。同じレコード針でも、個体差によって音質が異なることすらあります。レコード針を交換して音の違いを楽しむのも、レコード愛好家の楽しみの一つなのです。
なお、近年は「レーザーターンテーブル」と呼ばれるような、レーザー読み取り式で針のないレコードプレーヤーも存在します。とはいえレーザー特有の欠点も多く、一般に普及するには至っていません。
レコード針=カートリッジ
レコード針は、厳密にいうと「カートリッジ」と呼ばれるパーツの一部です。一方で、カートリッジを総称して「レコード針」と呼ぶこともあります。
カートリッジは、レコードの溝から得た情報を電気信号に変換するための部品です。カートリッジの先端に付けられたレコード針(針先)が、レコード盤面の溝から情報を読み取り、カートリッジ内部のマグネットやコイルといった部品が、電気信号に変換して、音として再生されます。
このように、カートリッジとレコード針は一体なので、レコード針=カートリッジと捉える人も少なくありません。とはいえ、「カートリッジの針先だけを交換する」こともできるため、レコード針はカートリッジの一部と理解しておくことで、よりレコードの奥深さを知ることもできるのです。
レコード針の寿命
レコード針は消耗品なので、寿命があります。現行のカートリッジの針先には、ほとんどの場合ダイヤモンドが使われています。それでも、レコードの再生を続けるうちに、徐々に摩耗してしまいます。
レコード針の寿命は、針先の種類にもよりますが、約150~500時間とされています。30分のLPレコードを毎日1枚再生した場合、およそ1年~3年で寿命を迎える計算です。
劣化して寿命を迎えたレコード針を使用し続けると、音質劣化や針飛びの原因となるのはもちろんのこと、レコードの盤面を傷つけてしまう恐れがあります。
なお、レコード針の寿命、とくに針先の摩耗に大きく影響するのは、実はレコードの盤面についたチリやホコリ等の汚れです。レコード針を大切に扱うためには、レコード盤のクリーニングも重要なのです。
カートリッジ(レコード針)の種類と特徴
レコード針が「カートリッジ」の一部であることは、すでにご紹介しました。音質の変化などを楽しむためにレコード針を交換する時は、カートリッジごと交換することになります。
カートリッジには、大別して2つの種類があります。ここからは、カートリッジの種類と特徴を解説します。
MM型
一般的に入門向けとされているのが、「MM型カートリッジ」です。MMは「Moving Magnet」の略で、その名の通りカートリッジ内のマグネットが振動する仕組みです。
MM型カートリッジの特徴は、出力電圧が高いため、パワフルな音質を楽しめる点です。また、構造がシンプルで、針の交換が簡単なことも特徴の一つです。手頃な価格のものが多く、ビギナーにはもちろん、消耗の激しいDJプレイにも適しています。
ダイナミックな音をより得意とするため、迫力のある音楽を堪能したい場合はMM型カートリッジがおすすめです。ロックやポップスはもちろん、ダイナミックレンジの広いクラシックのオーケストラサウンドにも適しています。
MC型
比較的中級〜上級者向けとされているのが、「MC型カートリッジ」です。MCは「Moving Coil」の略で、マグネットの働きによりカートリッジ内部のコイルが動く仕組みです。
MC型の特徴は、レコードのわずかな情報まで読み取る程の高い精度です。その特徴を生かした、クリアかつ繊細、豊かな音質が、MC型カートリッジの魅力といえるでしょう。弦楽四重奏などの室内楽や、しっとりとしたボーカルジャズのような、繊細な表現力を求められるジャンルで、とくに力を発揮します。
レコードプレーヤーに魅了されたリスナーの多くは、より良い音を求めてMM型からMC型に移っていきます。そのためか、「高級カートリッジといえばMC型」という認識が一般的で、メーカーも製品数もMC型の方が多くなっています。
MM型にはない注意点として、MC型カートリッジを使用するには「昇圧トランス」または「ヘッドアンプ」が必要です。また、MM型と違い針の交換はできません。針が劣化した場合は、カートリッジごと修理に出すことになります。
その他
2024年現在、流通しているカートリッジのほとんどは、MM型とMC型の2種類です。しかしそれ以外にも、MM型とMC型から派生した、固有の型を持つカートリッジがあります。
MM型カートリッジを元にしたカートリッジには、以下のような固有の名称を持つ型が存在します。
- VM型
- MP型
- IM型
- MF型
一方のMC型は、元々の完成度が高いために、固有の名称を持つ型はほとんどありません。以下のようなカートリッジが、MC型の派生として有名です。
- SPU
- SATIN
- ダイレクトカップル
これらの他にも、半導体型や光電子型、コンデンサー型といったカートリッジが知られています。
レコード針の針先(スタイラスチップ)の種類と特徴
レコード針の針先の部分は、「スタイラスチップ」とも呼ばれ、レコードの溝表面に直接触れる部分です。なお、昨今流通する針先の素材は、ほぼ全てがダイヤモンドです。
針先の形状にはいくつかの種類があり、種類によって音や用途にも違いが現れます。
ここからは、レコード針(カートリッジ)の針先の種類と、種類ごとの特徴を解説します。
丸針
丸針は、その名の通り「丸い先端」が特徴の針先で、もっとも標準的な針先です。先端を球状に丸めて研磨していることから、その呼称がつけられ、別名「コニカル針」とも呼ばれます。
丸針は、レコードの溝に対して「点」で接地するため、とくに低音が力強く、安定した音を再生できます。汎用的な針先ということもあり、比較的手頃な価格で購入できる点も魅力です。
針先がレコードの溝に深く入り込まないため、レコードを傷付けにくいことから、DJ用のカートリッジにも多く採用されています。
なお、丸針の寿命は、一般的に約200時間です。
楕円針
楕円針は、針先の形状がその名の通り「楕円」の針先です。丸針の先端が球形なのに対し、楕円針は正面と背面を削ることで、楕円形になっています。
丸針との違いは、レコードの溝により深く入り込めるため、細かな凹凸をより高い精度で読み取ることができる点です。丸針と比べて高音域の再生能力に優れている他、音の歪みも低減できます。
一方で、前述の通り針の正面と背面を削っていることから、再生時の針先への負担が大きいため、丸針と比較して摩耗しやすいのが弱点です。楕円針の一般的な寿命は約150時間と、丸針よりも短くなります。
溝に深く入り込む性質上、スクラッチなどの動作には向かないとされていますが、音質を重視したDJ用の楕円針も存在しています。
ラインコンタクト針
ラインコンタクト針は、別名「シバタ針」とも呼ばれ、丸針や楕円針と比較して、より高い音質と耐久性を兼ね備えた針先です。
楕円針をさらに進化させた針先であることから、「S楕円針」や「超楕円針」などとも呼ばれます。ORTOFONのカートリッジに採用されている「ファインライン針」も、ラインコンタクト針の一種です。
丸針や楕円針がレコードの溝に対して点で接するのに対し、ラインコンタクト針は線で接触する構造です。接地面が広いため、より忠実にレコードの音源情報を拾い上げること、またレコードと針先にかかる負荷を低減できることが特徴です。
製造工程が丸針や楕円針よりも複雑なことから、それらと比較して高価なのが難点です。しかし、その特性から耐久性が高く、丸針よりも長い約400時間が一般的な寿命です。
なお、ラインコンタクト針は「4chステレオレコード」と呼ばれる、4chサラウンドで録音されたレコードの再生にも対応しています。1970年代に登場したフォーマットでしたが、残念ながら普及することはなく、間もなく消滅しています。
SAS針
SAS針は、日本精機宝石工業株式会社(JICO)が独自開発した針先です。
SASは、特殊な先端形状によって音溝と針先の線接触を実現し、同時に音溝と針先の摩擦を低減するという、二律背反する条件を実現したレコード針です。
引用元:https://jico.online/2019/06/12/sas/
高音及び低音の再現性に優れ、更に長寿命化約500時間を実現しました。
SAS針は、丸針や楕円針、ラインコンタクト針のいずれとも異なり、レコード盤のカッティングに使用されるチップに限りなく近い形状をしています。それにより、溝との設置面積が広く、低音から高音まで広く再現できることが特徴です。
高い性能を誇る分、価格も相応に高く、ハイエンドオーディオ向きの針先といえるでしょう。なお、2016年には、後継機として「neo SAS針」が発売されています。
レコード針をより深く楽しむポイント
レコード針を交換することも、レコードの楽しみの一つです。
好みの音を求めてカートリッジを交換したり、針先を交換することで、レコードの奥深い世界をより深く楽しむことができるでしょう。
レコード針交換を楽しむならまずはMM型から
初めてレコード針を交換するなら、手頃な価格で購入できるMM型から入るのがおすすめです。
廉価版というイメージの強いMM型ですが、決して音質面でMC型に大きく劣るわけではありません。ダイナミックな音を得意とするため、ポピュラー音楽からジャズ、クラシックまで、幅広い音楽を堪能できます。
また、針先の交換が容易なのも、MM型の大きなメリットです。針先を交換するだけでも音は変わるため、音の変化を気軽に楽しむ点においては、MM型の方が優れています。
MM型では満足できない、よりハイエンドな音を味わいたくなったら、いよいよMC型に手を出してみるといいでしょう。
レコード針を選ぶ際は「質量」に要注意
レコード針を選ぶ際に注意したいのが、カートリッジ(=レコード針)の「質量(重量)」が、取り付けたいレコードプレーヤーに適合しているかどうかです。
レコードプレーヤーのトーンアームには、「適合カートリッジ質量(重量)」という仕様があり、対応するカートリッジの重量が設定されています。適合カートリッジ質量に適合しないカートリッジを使用すると、レコード針本来の性能を引き出すことができません。
なお、トーンアームには通常、レコード針とヘッドシェル(=レコード針をトーンアームに取り付けるためのアクセサリー)という、2つの部品を取り付けます。適合カートリッジ質量の仕様は、プレーヤーによって、ヘッドシェルを含む記載と含まない記載が混在しています。
適合カートリッジ質量は取扱説明書に記載されているため、レコード針を選ぶ前に必ず適合する質量の数値を把握しておきましょう。
MC型は昇圧トランスとヘッドアンプのどちらを選ぶ?
MC型カートリッジを使用するには、「昇圧トランス」または「ヘッドアンプ」が必要です。どちらもMC型専用なので、「MCトランス」や「MCヘッドアンプ」と呼ばれることもあります。
MC型はMM型と比べて低出力なため、それをカバーするために、昇圧トランスとヘッドアンプのどちらかが必要です。この2つは、出力を上げる方法が異なるため、音の特徴も異なります。
より広く使われているのは昇圧トランスで、商品も豊富です。電源を持たないためノイズに強く、仕組みがシンプルでダイレクトに音圧をアップさせます。力強いサウンドになる反面、帯域が俗にいう「カマボコ型」となる欠点もあります。
一方のヘッドアンプは、真空管やトランジスタにより音量を増幅する仕組みで、電源が必要です。構造上小型化が容易なため、ボタン電池を内蔵しヘッドシェルと一体化した製品もあります。音の特徴は昇圧トランスと対照的で、フラットな傾向の強いサウンドです。
なお、MC型の再生に対応する「フォノイコライザーアンプ」には、昇圧トランスやヘッドアンプが内蔵されている製品もあります。初めてMC型を使う場合は、そういった製品を選んでもいいでしょう。
まとめ
レコードを楽しむ上で、レコード針は欠かせないパーツです。レコード針や針先を交換することで、1枚のレコードをより深く堪能することができます。
レコード針は消耗品でもあるため、使い続ければ必ず交換する時が訪れます。レコード針と針先について深く知ることで、交換の際にプレーヤーに適した針を選べるように、グレードアップの際にはより好みの音が出る針を選べるようになるでしょう。
劣化したレコード針を使い続けることは、レコードにも悪影響を与えます。そろそろ寿命かなと感じたら、早めにレコード針や針先を交換しましょう。
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